「北朝鮮の体制崩壊」目標に 米韓、21日から軍事演習
ソウル=牧野愛博
2017年8月20日20時36分
米韓両軍は21日から31日まで、朝鮮半島有事に備えた米韓合同軍事演習「乙支(ウルチ)フリーダムガーディアン(UFG)」を韓国各地で行う。コンピューターを使い、有事のシナリオに基づいて戦術を確認する机上演習を主眼とする。軍事関係筋によれば、2年前からUFGで使い始めた新たな軍事作戦計画「5015」は、従来と異なり、北朝鮮の体制崩壊を目標に据えているという。
北朝鮮は最近、米韓が金正恩(キムジョンウン)・朝鮮労働党委員長の殺害を狙っていると激しく反発。急ピッチで進める核・ミサイル開発の背景には、体制維持への危機感があるとみられる。北朝鮮がUFGを契機に、改めて好戦的な言動や軍事挑発を行う可能性が高まりそうだ。
米韓は従来、朝鮮半島での全面戦争を想定した軍事計画「5027」を保有。韓国防衛を目的として、反撃の際に北上する最終ラインを平壌と東海岸の元山を結ぶ線に定めていた。
だが、北朝鮮が大規模な食糧危機などで混乱した1990年代半ばから、北朝鮮の体制崩壊に備えた計画が必要だという声が米韓で浮上。99年に北朝鮮での内戦や政権交代など非常事態の基本的な想定と対処方針だけを定めた概念計画「5029」を作った。
新計画「5015」はこの「5029」を基礎に、実際に投入する兵員や武器の数などを細かく定め、実戦に使う軍事作戦計画に格上げしたものだという。
北朝鮮の侵攻を食い止める防衛戦争を基本とした旧計画と異なり、新計画には北朝鮮の現体制を崩壊させた後の戦後統治に関係する計画も含まれるという。ゲリラ戦など、最近の北朝鮮軍の特徴に合わせた戦闘も包括的に取り入れている。
一方、米韓は2010年3月の韓国哨戒艦沈没事件と11月の大延坪島(テヨンピョンド)砲撃事件で、北朝鮮に十分な反撃を加えられなかった。このため、新計画では北朝鮮からの攻撃があった地点だけでなく、攻撃を指示した地点などにも反撃を加えることを原則としているという。反撃と侵攻も同時に行う。
米軍は新計画に基づき、毎年春に実施する実動演習で、特殊部隊による侵攻や北朝鮮が保有する核兵器の無力化などの演習を繰り返している。韓国軍は今年12月、正恩氏を含む中枢部を攻撃する「特殊任務旅団」(特殊部隊)を創設。在韓米軍は18年に攻撃能力を備えた無人機「グレーイーグル」を配備する予定だ。
北朝鮮メディアは15日、正恩氏がグアム島周辺への中距離弾道ミサイル4発による包囲射撃について「当面、米国の行動を見守る」と語ったと報道。正恩氏は「米国が朝鮮半島周辺で危険な妄動を続けるなら、重大な決断を下す」と語っていた。
20日付の労働新聞(電子版)は、UFGについて「敵対意思の最も露骨な表現。火に油を注ぐように情勢をさらに悪化させるであろう」と警告した。
韓国の専門家からは、北朝鮮が15年夏に軍事境界線近くで起きた地雷爆発事件のような挑発を起こす可能性について警戒する声が上がっている。(ソウル=牧野愛博)
米韓の主な合同軍事演習