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'모국어'와 이민자 아이들

작성자청소부|작성시간26.06.05|조회수6 목록 댓글 0

論点

 

「母語」と移民のこども インタビュー 田中雅子・上智大教授

毎日新聞2026/6/5 東京朝刊有料記事3828文字

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=仲間礼撮影

 定住の時代から移動の時代となり、生まれたところで一生を終えるのではない人が増えている。同じことばを一生使い続けるとは限らず、親が使うことばと、こどもの使うことばが違うこともある。これまでは、あまり疑問を持たれることがなかった、「母語」について考えた。【聞き手・須藤孝】

日本語教育を優先 少数派見えぬ社会

――日本社会では、日本語話者が多数であることも影響して、ことばを維持することの難しさに気がつきにくい状況があります。

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 世界的にみると、移民のこどもが自分のことばを維持する必要を感じられなくなっているのは、普通のことです。○語を維持する、ということだけではなく、複数の言語を使えることの豊かさをもっと尊重すべきです。

 私は、ネパールで10年以上暮らして、ネパール語も話せます。ネパールは多言語社会です。人によって事情は異なりますが、だいたい、自分の民族言語、国語としてのネパール語、そして英語での教育も受けています。ですから、来日すると、日本語が三つめ、四つめのことばになります。

 

 

 

 ところが日本では、移民のこどもの教育というと、すぐに、日本語教育となり、そして難しい敬語や漢字の書き順まで求められます。私は、移民のこどもに対しては、日本語教育それ自体よりも、そのこどもが多言語を維持するために、社会がどうやって変わることができるかということが課題だと考えています。

――日本では日本語話者が多数であるために、とくにことばでは、少数派のことを忘れがちです。

 ことばには、残念ながら、厳然としたヒエラルキーがあります。英語がもっとも重要だということは、誰もが認めざるを得ない現実があります。一方で、日本にこれだけネパール人がいても、ネパール語学科のある大学はありません。こどもと話しているとわかるのですが、日本では、その子の持つことばを話す日本人が社会にどれだけいるかが、本人にとってのそのことばの価値につながるところがあります。

 

 たとえば、ポルトガル語やベトナム語を学ぶ日本人はそれなりにいて、日本人に教えたり、通訳をしたりすることがあるので、職業として成り立ちます。ところが日本人にネパール語を教える仕事などは、ないわけではありませんが、ごく限られています。そうしたことが、ネパールから来日した人にとっては、ネパール語を自分のアイデンティティーとして主張することを難しく感じさせています。

――自分の権利と感じること自体が難しいということですね。

 ネパール語を劣ったものと感じてしまうということです。また、日本のメディアの報道では、ネパールは、その良さを取り上げる場面であっても「途上国」として描かれることがほとんどです。日本にいるネパール人の家庭で、テレビでネパールの話題が出ると、こどもがテレビを消してしまう、という話を聞いたことがあります。そのような社会のなかでは、ネパール人のこどもは、残念ながら、ネパール語を維持することでアイデンティティーを保ちたいとは思えなくなります。

 

――ネパール語を使う機会もあまりないように思います。

 ネパール語がその人にとって生きていく上で、必要だと思えるかどうかです。いま、南アジア、とくにネパールやスリランカでは、国外に出ることは、移住というよりも脱出です。機会があるときに国外に脱出し、もう帰らないということです。出国できるならばどの国でもいい、そして帰らないとなると、ネパール語を維持し続ける必要性を感じることが難しくなります。

 英語だけでやっていけるなら、それが一番いいと考えるネパール人も多いのです。いまはネパールの公立学校でさえ、英語教育にシフトしています。移民以前に、ネパールでも、ネパール語の今後は、揺れ動いているのです。すると、なぜネパール語を話し続ける必要があるのか、こどもにネパール語を維持させる必要はあるのか、と考えるようになります。

――保護者はこどもに自分のことばを使ってほしいのではないでしょうか。

 ネパール人の家庭では、ネパール語の教育については、どの家庭でもとても危機的な状況です。日本にもネパール政府カリキュラム校やネパール語が学べるインターナショナルスクールはありますが、もちろん、無償化などの対象ではありません。お金のある人でなければ通えません。結局、家庭のなかでは、ネパール語の優先順位は下がり、切り捨てられていく状況があります。こどもに、オンラインでネパール語を学ばせる保護者もいます。けれども、こどもは、勉強するなら英語の方がいい、ネパール語は電話で祖父母と話せる程度でいいと言います。ネパール語を身につけてほしい親と、こどものすれ違いも多くあります。

同調圧力やわらげ 学ぶ姿勢必要では

――ただ一つの大切にすべき自分のことば、という考え方が通用しにくくなっているのですね。

 日本にいるネパールの子は、両親ともネパール人であっても、第1言語が日本語であることも多いのですが、そうしたこどもは、自分のことを、英語やネパール語も話せるというようにしか思っていません。保護者からことさらに、母語としてのネパール語を、と言われることに、複雑な感情を持っています。大人になってからネパール語を学ぶために、ネパールの大学に留学するこどももいます。しかし、それはネパール語を学びたいという、そのこどもの選択です。

――母語というのは難しいのですね。

 保護者は、心のなかでは、こどもにネパール語を話してほしいと考えている場合もあります。しかし、実際には、こどもが日本の学校でうまくやっていくために、家庭でも、両親も含めて、日本語を話すべきだとさえ言う保護者がいます。家庭でもネパールの食事ではなく、学校で困らないように、日本食を食べさせているというのです。これだけ、ネパールレストランがふえているのに、ネパール食を作っている人たちの家庭で、こどもに日本食を食べさせているようなことがあるのは、とてもおかしなことです。むしろ日本の学校給食でネパール食を出す日があっても良いのではないでしょうか。

――ことばも同じですね。

 ことばも、日本にある学校だからといって、コミュニケーションを日本語だけにする必要はないと思います。あいさつぐらいは、その学校にいるこどもたちのことばを使ってみてはどうでしょうか。特定のことばや食事だけではなく、いろいろなことばや食事を知ることで、少数派の人たちとの距離が近くなります。日本語を一方的に教えるだけではなく、授業のなかで、あなたのことばではあいさつはなんというのですか、と先生が問いかけることがあれば、その子も、自分はなにかが足りない側、学ばされているだけの側だと思わなくなります。みなが、そのような経験をすることで、少数派の人たちは異質なものではなく、社会に常にいる人たちだと知ることができます。

――同化を疑問に思わない人がたくさんいます。

 日本はとても人種主義的な社会です。ネパール人の雇用をめぐっても「日本人にみえる人を雇いたい」と言われます。その際には、肌の色や顔立ちが問題にされます。化粧も髪形も日本人のようにしろ、と言う職場があります。どこから来ても、どんな人であっても、すべて日本人に同化しろという恐ろしい圧力がかかっています。

 受け入れる社会が変わらないとなりません。そして、何もしなければ、社会は変わりません。授業でも、ネパール語やアラビア語などのあいさつなどをちょっと学ぶだけで良いのです。科目としてネパール語を履修しろということではありません。たとえば総合的学習の時間を使って、いろいろなことばを学ぶだけで違います。

――必ずしも自分のことばだけではないということですね。

 ネパールから来た子で、サッカー選手になりたいから、将来ブラジルに行きたくて、ポルトガル語を勉強しているこどもがいました。それでよいと思います。

 ことばに限る必要はないのですが、やはりことばは影響が大きいと思います。たとえば、クラスのこどもが、ネパール語であいさつができるなら、ネパールのこどもにとってだけではなく、同調圧力をやわらげることができるのではないでしょうか。クラスに1人だけ外国人のこどもがいる、と考えるより、その国のことをみんなで学びましょうと考えるだけで、多くのことが解決に向かう可能性があると思います。発想の転換はとても大事だと思っています。


母語と母国語

 母語は、こどもが生まれてから最初に話せるようになることばを指す。母国語は、こどものルーツがある国の学校教育や公的機関で用いられることばを指す。したがって、母語が民族語である場合など、母語と母国語は一致しないことがある。こどもの第1言語と、親の第1言語が異なることもある。国際的には、こどもの権利を守るために、母語を維持する教育が重視されている。


 「論点」は原則として毎週水、金曜日に掲載します。ご意見、ご感想をお寄せください。 〒100-8051毎日新聞「オピニオン」係 opinion@mainichi.co.jp


 ■人物略歴

田中雅子(たなか・まさこ)氏

 専門は、国際協力論、ジェンダー論、移動・移民研究。「滞日ネパール人のための情報提供ネットワーク」コーディネーター。編著に「移動する子どもたちのことばの教育」(明石書店)。近著に「ネパールの人々の移動の諸相」(共著、古今書院)。

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