「日光権現、宇都宮、那須の湯泉大明神」…
毎日新聞2026/6/9 東京朝刊有料記事613文字
宇都宮市中心部の宇都宮二荒山神社の大鳥居。近くの繁華街「オリオン通り」でクマが目撃された=2026年2月8日、村田拓也撮影
クマがとどまる事業所の敷地のそばで、緊急銃猟の実施へ向けて準備する警察や市の担当者ら=福島市笹木野で2026年6月2日、松本光樹撮影
「日光権現、宇都宮、那須の湯泉(ゆぜん)大明神」。平家物語が描く源平合戦・屋島(香川県)の戦い。平家の船の女官が掲げた扇の的を那須の与一が射る名場面。今の栃木県出身とされる与一が地元の神々に祈る▲県都の名でもある宇都宮は二荒山神社を指す。古くから霊験あらたかと敬われてきたのだろう。宇都宮市は神社を中心に発展した。周辺は県下一の繁華街。アーケード街「オリオン通り」は歌にもなった▲夜でも明るい繁華街。突然、クマが前を走り抜ければ、誰でも肝をつぶす。オリオン通りの防犯カメラが7日未明、その瞬間をとらえた。市中心部でのクマの目撃は記録にないという。市内の小中学校は臨時休校になった▲市街地に出没する「アーバンベア」が流行語大賞の候補になったのは3年前。今年は盛岡市や仙台市の中心部にも現れ、住民を驚かせた。2日には福島市の事業所にクマが入り込み、警備員ら4人を襲ってケガをさせた▲里山の荒廃で森と市街地の境界が曖昧になったことがアーバンベア増加の一因とされる。二荒山神社は宇都宮丘陵の南端。クマは緑豊かな丘陵地帯を南下したらしい。森林が3分の2を占める列島である。似た環境にある都市は少なくあるまい▲臨時休校を余儀なくさせるのではクマ害も自然災害級。首都・東京でも八王子市などで目撃が相次ぐ。「腹ばいになり両手を首の後ろに回して頭と顔、首筋をガードする」。クマに襲われた場合の防御姿勢の取り方も今や必須の実用知識のようである。
