在留資格の厳格化 社会の支え手が失われる
毎日新聞2026/6/9 東京朝刊870文字
在留資格の手数料引き上げに反対する国会前行動の参加者たち=東京都千代田区で2026年5月21日、仲間礼撮影
外国料理店や輸入食品店などを経営する外国人が、廃業の危機に直面している。起業する人向けの在留資格「経営・管理」の取得要件が厳格化されたためだ。
従来は「資本金500万円以上」か「従業員2人以上の雇用」のどちらかを満たせば取得できた。昨年10月から「資本金3000万円以上」が必須となった。
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ハードルを一気に引き上げたのは、制度を悪用し、ペーパーカンパニーを設立して不正に入国する外国人がいると国会などで問題視されたためだ。月当たりの取得申請件数は96%減った。
既に在留資格を持ち事業を営んでいる人には、3年間の経過措置が設けられた。それでも将来的には要件を満たす必要がある。
国内全体で見ても資本金3000万円以上の企業は1割に満たない。規模が小さい飲食店などの経営者が、多額の資金を用意するのは困難だ。営業の継続を諦め、帰国を決めた人も現れている。
バングラデシュ出身の男性が経営する輸入食品店=埼玉県で2026年5月、田原拓郎撮影
東京・新大久保をはじめとして、諸外国の飲食物を扱う店が集まり、街の活性化につながっている地域は各地にある。閉店が相次ぐことになれば、社会の多様性が損なわれてしまう。
日本で働く外国人が故郷の味を懐かしみ、憩いの場となっているエスニック料理店も多い。コミュニティー消滅を招く懸念もある。
経営者たちの事情に目配りしないまま、安易に一律の厳格化を図ったと言わざるを得ない。まっとうに事業を営む人々を苦しめるだけであり、早急に見直すべきだ。
不正行為があるのならば、まずは実態を把握した上で個別に対処していくのが筋だ。
そもそも「経営・管理」の在留資格は、起業を後押しして日本経済の発展につなげる目的で創設された。その趣旨にも反する。
外国人の在留資格を巡っては、変更や期間更新の際の負担も格段に重くなる。手数料の上限額を現行の10倍に引き上げる改正入管法が今国会で成立した。出費がかさみ、日本での生活を断念する人すら出てくる可能性がある。
人口減少が進む中、外国人は社会を支える存在だ。規制を強化するばかりでは、日本での就労を望む人を減らしかねない。排外的と映れば日本は立ち行かなくなる。
