原発の建て替え目標 国民理解得るには程遠い
毎日新聞2026/6/10 東京朝刊876文字
政府は廃炉が決まった原発の建て替え目標を打ち出し、原子力回帰路線を一段と鮮明にした。関西電力は美浜原発での建て替えを検討する。(手前から)3号機、2号機、1号機=福井県美浜町で2025年11月23日、本社ヘリから西村剛撮影
多くの問題を抱える原発を、この先何十年も使い続けるつもりなのか。なし崩しの建て替えに国民の理解が得られるとは思えない。
経済産業省が、廃炉が決まった原発の建て替え目標を公表した。2040年代までに最大5基を建て替え、50年代までにさらに9基追加するという。東京電力福島第1原発事故後、目標を明示したのは初めてだ。
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人工知能(AI)の普及などで増大する電力需要に対応する狙いがある。
政府は昨年策定したエネルギー基本計画で、福島事故以来の脱原発依存の方針を撤回し、最大限活用すると打ち出した。24年度で9・4%にとどまる原発の電源構成比率を、40年度に事故前と同水準の2割程度に引き上げる計画だ。
既存原発は順次廃炉となるため、再稼働だけでは賄えない。経産省の試算では、比率達成に向けて50年代までに最大1600万キロワットの容量が必要になるという。
関西電力はすでに福井県の美浜原発で建て替えを念頭に地質調査を始めた。他の電力会社も検討中だが、巨額の建設費がネックとなっている。建て替えには20年程度を要することから、経産省は目標を掲げた上で、公的支援を拡充し投資を促すことにした。
だが、いずれ廃炉となる既存の原発の再稼働と、次世代に残る建て替えでは政策決定の重みが異なる。安全性やコストを精査しない安易な原発回帰は禍根を残す。
地震・津波と原発事故の複合災害に対する住民の不安は根強い。技術者など安全を支える人材の不足も懸念される。中部電力浜岡原発(静岡県)の耐震データ不正問題に象徴されるように業界の安全軽視の体質も改まっていない。
たまり続ける使用済み核燃料の問題も未解決だ。再処理工場の完成は再三延期され、高レベル放射性廃棄物(核のゴミ)の最終処分場の立地先も見通せない。こうした費用も勘案すれば、原発はもはや安価な電源とは言えない。
中東情勢の混乱や気候危機の深刻化でエネルギーの脱炭素化が急務であるのは確かだ。だが、原発だけに解決策を求めるようでは思考停止というほかない。再生可能エネルギーの更なる活用も含め持続可能な政策を探るべきだ。
