善信尼は…
毎日新聞2026/6/11 東京朝刊有料記事625文字
豊浦宮と豊浦寺の遺構。敷石は宮殿の周囲に敷かれていた。隅に柱穴もある=奈良県明日香村の向原寺で2023年1月29日、松井宏員撮影
皇族数確保について全体会議を終え、報道陣の取材に応じる森英介衆院議長=東京都千代田区の衆院議長公邸で2026年6月8日午後5時17分、平田明浩撮影
善信尼(ぜんしんに)は11歳で仏教に帰依した日本初の出家者である。聖徳太子と同年代とされる渡来氏族の娘で百済にも留学した。日本書紀は排仏派にムチで打たれたこともあったと記す▲奈良県明日香村の向原寺に善信尼ゆかりの豊浦寺の遺構がある。その場所で寺以前に建てられた豊浦宮の跡が確認されたのは1985年。初の女性天皇、推古天皇が6世紀末に即位した皇宮である▲それからの飛鳥時代は女性の活躍が目立つ。聖徳太子を摂政に遣隋使を送り、冠位十二階や十七条憲法を制定した推古天皇の治世は36年に及んだ。斉明天皇は百済支援の遠征軍派遣を命じ、持統天皇は藤原京を完成させた。平城京遷都を行った元明天皇を含め史上8人の女性天皇の半数が即位した▲「飛鳥・藤原の宮都」が世界遺産に登録される見通しだ。周辺地域から知識や技術を取り入れ国家の体制を整えた時期。日本の国号や天皇の称号もこの頃に生まれたという。旧弊にこだわってはいられなかったのだろう。天皇の譲位や重(ちょう)祚(そ)(再即位)も行われた▲「旧宮家から養子で皇族になった男子から生まれた男子は皇位継承権を持つ」。森英介衆院議長の「勇み足発言」からは女性・女系天皇をめぐる議論に踏み込みたくない保守派の本音が垣間見える▲「女性天皇は例外、中継ぎにすぎない」。「世界遺産」の価値を思えば、男系継承を決めた明治以来の主張が的外れに思える。日本が誕生する過程で女性が果たした役割にもっと目を向け、議論を深めてはどうだろう。
