「飛鳥・藤原」世界遺産へ 国際交流の価値を現代に
毎日新聞2026/6/12 東京朝刊876文字
藤原宮跡(中央右)と大和三山。左奥から時計回りに畝傍山、耳成山、香具山=奈良県橿原市で2024年9月9日午後3時13分、本社ヘリから
奈良県橿原(かしはら)市、桜井市、明日香村に点在する「飛鳥・藤原の宮都(きゅうと)」について、国際記念物遺跡会議(イコモス)が世界文化遺産への登録を勧告した。7月に正式登録される見通しだ。
6世紀末~8世紀初めに置かれた都の遺跡群である。豪族の連合政権から、律令制度に基づく中央集権体制へ移り変わる過程を、二つの都が示している。その点で、人類にとって普遍的な価値があると認められた。
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19の構成資産には、大化の改新へ続く乙巳(いっし)の変の舞台となった飛鳥宮跡、持統天皇が遷都した藤原宮跡のほか、極彩色の壁画で知られる高松塚古墳やキトラ古墳などが含まれる。
二つの都は、中国大陸や朝鮮半島との緊密な政治的、文化的交流の中で形成された。渡来人によってもたらされた土木技術や都市計画の思想に影響を受けた。
日本の風土において独自の制度や文化へと昇華していったことは興味深い。審査基準の一つである「価値観の交流」が評価されたゆえんだ。
遺跡が示す国際交流の価値は、分断が深まり、排外主義が広がる現代だからこそ高まる。
イコモスの追加的勧告も重く受け止めるべきだ。藤原宮を囲むように立つ畝傍(うねび)山・耳成(みみなし)山・香具(かぐ)山の「大和三山」は構成資産から外されたが、都の場所を選ぶにあたって重要な意味を持っていたことを指摘した。古代の人が神聖視していた山の景観を保全するとともに、訪れた人が歴史的背景を理解できるようにしてほしい。
高松塚とキトラの壁画は、保存、修復のために古墳からはぎ取られたが、文化財は現地保存が原則である。勧告も、古墳に戻して保存するための技術開発を継続するよう求めた。
住民の努力にも目を向けたい。構成資産の大部分がある明日香村が、遺跡だけでなく風土や景観を守ってきた意義は大きい。開発の波が押し寄せる中、研究者や古代史ファンが声を上げ、国は類例を見ない「明日香法」を制定した。
世界遺産になれば観光客の増加が見込まれる。地中の遺構が多いため、見せる工夫も課題だ。活用と保護のバランスを取りながら、価値を後世につなげたい。
