食べ始めのときのあの胸の高鳴り…
毎日新聞2026/6/18 東京朝刊有料記事619文字
かつて子どもたちに大人気だったホームランバーの復刻版。バニラ(上)とチョコで銀紙につつまれている=大阪市北区で2023年6月6日、西村剛撮影
公正取引委員会が立ち入り検査した大手6社のアイス=東京都千代田区で2026年6月16日、滝川大貴撮影
食べ始めのときのあの胸の高鳴り……崩落の悲しい思い出。そこから学んだ用心の心。もしやと期待した“あたり”の文字……。4月に亡くなった食べ物エッセーの名人、漫画家の東海林さだおさんが「アイスキャンデーに学ぶ」と題して書いている▲特に「棒もの」が好物だったそうだ。戦後、大量生産され、子どもの手にも届く価格になったアイス。似たような思い出を持つ人も少なくあるまい▲エッセルスーパーカップ(明治)、雪見だいふく(ロッテ)、ピノ(森永乳業)、チョコモナカジャンボ(森永製菓)、ガリガリ君(赤城乳業)、パピコ(江崎グリコ)。大手6社の売れ筋商品である。「棒もの」は減ったが、どれもロングセラーだ▲一昔前より値上がりした。それでも税込み200円未満。物価の優等生と思っていたが、裏では業界ぐるみで10円単位の値上げ幅調整などが行われていたらしい。公正取引委員会がカルテルの疑いで6社を立ち入り検査した▲原材料費、人件費、輸送費。値上げの要因には事欠かない。スーパーでも物価高を実感することが増えた。日銀もさらなる物価上昇に備え、政策金利を引き上げた。それでも市場をゆがめてはなるまい▲「一匙(さじ)のアイスクリムや蘇(よみがえ)る」は明治の俳人、正岡子規の句。病身の子規は友人の高浜虚子から届いたアイスに感激したという。今では高品質になる一方、貴重さは減ったが、暑い日の一口に「蘇る」は共感できる。6社にはアイスを愛す消費者に向き合ってもらいたい。
