古代エジプトのラムセス大王は…
毎日新聞2026/6/17 東京朝刊有料記事608文字
「ラムセス大王展 ファラオたちの黄金」で展示されたラムセス大王(ラムセス2世)のひつぎ=東京都江東区のCREVIA BASE Tokyoで2025年9月19日、高島博之撮影
フランスで開催された主要7カ国首脳会議(G7サミット)に参加し、マクロン仏大統領(左)と握手するトランプ米大統領=フランス東部エビアンで15日、ロイター
古代エジプトのラムセス大王はアジア親征で今のトルコを拠点にしたヒッタイト王国の軍と戦った。約3300年前のカデシュの戦い。決着はつかず、両者は「永遠の平和と友好」をうたった条約を締結した▲ニューヨークの国連本部にトルコから贈られた条約の銅製レプリカが飾られている。イスタンブール考古学博物館が所蔵するオリジナルはくさび形文字が刻まれた粘土板。「現存する世界最古の平和条約」だ▲エジプトの神殿にも条約が象形文字で記されている。締結後、数十年間は平和が保たれ、友好関係が続いたというから、国家間の約束が機能したわけだ▲国際関係が未成熟だった古代と比べても心もとない。トランプ米大統領の誕生日とG7サミットに合わせたような米国とイランの戦闘終結合意である。トランプ氏らが覚書への電子署名を済ませても疑いの視線は消えない。トランプ氏はイランが核開発を放棄すると主張するものの先行きは不透明。イスラエルはレバノンからの撤退を拒否している▲「世界の船よ。エンジンをかけ、石油を積み込め」。トランプ氏はホルムズ海峡が無料で開放されると勝ち誇ったようにSNSに記した。原油価格が元に戻るだけなら何のためのイラン攻撃だったのか▲カデシュの戦いを描いた古代エジプトの詩はラムセス大王の超人的活躍をたたえているそうだ。が、せいぜい引き分けが実態だったらしい。結果に関わらず勝者を装うトランプ氏のメンタリティーだけは古代の大王に負けない。
