「ギュられる」は現実か=町野幸
毎日新聞2026/6/18 東京朝刊有料記事992文字
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「ギュられる」という造語が、インターネットスラング(俗語)として若い世代を中心に広まっている。主に「人工知能(AI)に仕事を奪われる」ことを指す。
語源になったとみられるのは「シンギュラリティー」(技術的特異点)。AIの進化が人類の知能を超える転換点が到来するとの説があり、それを指す言葉だ。
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そこから転じた「ギュられる」は、例えば「○○はギュられそう」といった形で使われる。SNS上では、特定の職業を挙げた書き込みが散見される。
雇用不安はじわじわ広がっているということなのか。経済産業省が3月に公表した2040年時点の推計でも、AI普及を一つの大きな理由として、労働市場で事務職が440万人余剰となる可能性があると示された。
「私の周りでは分かりやすく代替が始まっていますよ」
首都圏で個人経営の飲食店を経営する男性は、周囲に「ギュられ」つつある人がいると明かす。
男性がAIを活用するようになったのはメニュー表の作製。かつてはメニュー更新のたびに5万~10万円ほどかけて専門業者にデザインを発注していたが、今や自分で簡単に、費用もさしてかからずに作れるようになってしまった。周囲の飲食店にも手法を広めているという。
AIを使えば、レイアウトなどが簡単にできる。料理の画像やイラストをAIで生成し、メニューにそのまま載せることも可能だ。
だが、正直モヤっとする。SNS上でも、AI画像に違和感や嫌悪感を訴える声は上がっている。
率直に聞いてみた。「AIで作られたメニュー表を敬遠するお客さんはいないのですか?」
男性は「もちろん、中にはそういう方もいるかもしれませんね」と笑って、こう続けた。「とはいえ、トータルでは客は増えました。AIかどうか気にする人は実際そんなに多くないのでは」
ううむ、そういうものなのか。男性によると、メニュー名や料理の説明をAIで多言語に翻訳し、メニューに載せるようになった。訪日客の来店は間違いなく増えているという。
ただ食に貪欲な私は、食欲を刺激するような「シズル感」は、AIで出せるとはどうにも思えないのだが……。
デザイナーしかり、その道のプロの存在意義はなくならないだろう。とはいえ、「テンプレ」にとどまらない、人間にしか提供できない高い付加価値が、職種限らずシビアに問われる時代になってきたのかもしれない。(専門記者)
