証拠でございますか?=吉井理記
毎日新聞2026/6/17 東京夕刊有料記事885文字
毎日新聞読者にはおそらくなじみが薄いメディアの一つが、右派系論壇誌の月刊「Hanada」だろう。
編集長は花田紀凱さん。週刊文春編集長などを務めた名編集者だ。何度かインタビューした。「Hanada」の論調に賛同はしないが、「僕はホント、雑誌が好きでねえ……」という花田さんに、共感に似たものを感じた。
「Hanada」にはもちろん高市早苗首相も登場する。その高市氏、花田さんの古巣・週刊文春が報じた「中傷動画」疑惑を5月28日の参院厚生労働委員会でただされ、「週刊誌の記事が証拠でございますか?」と憤ってみせた。
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読者には釈迦(しゃか)に説法だが、自民党総裁選や前回衆院選で、高市氏の事務所がライバル候補や野党幹部を中傷するSNS動画の作成に関与した、という疑惑だ。
週刊文春がさらなる証拠として、高市氏の秘書と動画を作った男性とのやりとりだという音声を公表し、ついに高市氏の説明が変遷を始めたことはご存じの通り。
疑惑の中身もさることながら、「週刊誌の記事が証拠でございますか?」というセリフに感じるモヤモヤは何なのか。
例えば、同じ内容の報道であっても、高市氏は「産経新聞の記事が証拠でございますか?」とはたぶん言わない。「NHKのニュースが~」とも言わない。「週刊文春の記事が証拠でございますか?」とも、おそらく言わない。
スクープを連発してきた週刊文春の記事とは言わず、あくまで「週刊誌」と表現する。週刊誌と聞けば「ゴシップ、信用できない」という、ふた昔くらい前のイメージを高市氏が利用しようとした、と見るのはうがち過ぎか。
高市氏の活字メディアデビューは、小学館の週刊誌「週刊ポスト」1989年12月8日号から始まった連載「高市早苗のアズ・ア・タックスペイヤー」。当時の高市氏の肩書は、当時も今も存在しない「米連邦議会立法調査官」である。いやはや。
「週刊誌の記事が」というセリフににじませた疑念は、今や週刊文春にではなく、高市氏本人に向けられている。花田氏ほどではないが、僕も雑誌、週刊誌が好きだ。この件は本欄でも引き続き取り上げたい。(オピニオン編集部)
