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오로지 하나의 목숨

작성자청소부|작성시간26.06.18|조회수6 목록 댓글 0

あした元気になあれ

 

たったひとつのいのち=小国綾子

小国綾子

毎日新聞2026/6/16 東京夕刊有料記事904文字

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味戸ケイコさんの作品「たったひとつのいのち」(2026年)

 少女が一人、白い鳥を抱いて立っている。うつろな眼が何か問いたげにこちらを向いている。細い2本の足元には草木一本生えない荒れ地。そのかなたに、かすかな光がにじむ――。私はその絵の前で動けなくなった。絵の題は「たったひとつのいのち」。イラストレーター、味戸ケイコさん(82)の個展で出合った一枚だ。

 雑誌「詩とメルヘン」の初代編集長、やなせたかしさんに才能を見いだされ、同誌を代表する描き手として活躍した味戸さん。私は大学生の時に彼女と知り合い、21年前に出版した「魂の声 リストカットの少女たち」(講談社)には表紙画を描いてもらった。

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 彼女の個展に通うのは、年に1度の「心の健康診断」だ。鳥や花、森や星……。柔らかで繊細で、風や水の音が聞こえてきそうな彼女の絵を見て回り、自問する。

 「私の心はまだ柔らかい? 小さな声を聞き取れている?」と。

 そして、その日一番心を動かされた絵を心に刻む。少女の奏でる楽器の音や鳥の声が聞こえてきそうな絵を選ぶことが多い。

 

 

 

 でも、今年は違った。私を身動きできなくした絵は、無音だった。他の絵とはどこか違う重苦しい存在感。少女は黙って、私に問いを突きつけていた。「あなたは今、何をする?」

 味戸さんがその絵のことを話してくれた。「普段は絵に強いメッセージを込めたりしない。でも、この絵だけは違うの」

 

 何年も前のこと。味戸さんはテレビで戦場に立つ一人の少女の映像を見た。こちらを見つめる瞳は悲しいほど静かだった。「それ以来、少女はずっと私の心にすみ着いて『戦争の意味を考えて』と訴えかけてくる。大人たちは数え切れないほどの悲嘆や絶望や苦痛の声が聞こえないのですか、と」

 世界で争いがやまず、日本の政治の行方も心配で、彼女は今年、とうとう心の中の少女を描いた。「もう国会前のデモにも行けないし、せめて」と。「子どもたちを過酷な悲しみの深い淵に容赦なく投げ込んでしまう、大人の一人には決してなるまい」と誓いながら。

 

 その日、私は長いこと絵を見つめていた。味戸さんの描いた少女を心のうちにすまわせ、忘れっぽい私に「あなたは今、何をする?」と問い続けてもらいたくて。(オピニオン編集部)

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