沙翁シェークスピアの戯曲「ハムレット」の有名なセリフ…
毎日新聞2026/6/19 東京朝刊有料記事609文字
95歳で亡くなった英文学者の小田島雄志さん=東京都新宿区で2009年12月17日、小林努撮影
劇作家、ウイリアム・シェークスピアの肖像画
沙翁シェークスピアの戯曲「ハムレット」の有名なセリフ「トゥー・ビー・オア・ノット・トゥー・ビー……」。明治の初邦訳は横浜の英国人による「アリマス、アリマセン、アレワナンデスカ」という▲これでは舞台にならないが、その後も文学者たちが短く奥深い言葉の適訳を追求してきた。「世にある、世にあらぬ、それが疑問じゃ」(坪内逍遥訳)、「生か、死か、それが疑問だ」(福田恒存訳)▲単なる生死でなく「現状のままで無為に生きるか、死を賭して現状を打破するか」と解釈したのが英文学者の小田島雄志さん。「このままでいいのか、いけないのか、それが問題だ」と訳した▲経緯を記したエッセーに「この訳でいいのか、いけないのか、それが問題だ」とある。責任を人に押しつければ「転嫁泰平」。人をニコニコさせる「自信、菓子折り、金、お世辞」。小紙に連載したエッセーの「落ち」だ▲機知に富むユーモアが「パン」と呼ばれる言葉遊びを自在に操る沙翁の翻訳に生きた。「皇太子だろうが、明太子だろうが」は「ヘンリー六世」のセリフ。仏皇太子の称号、ドーファン(イルカ)とつづりが似たサメを対比させた原文の味わいを字面の似た海産物で表現した▲95歳で亡くなった小田島さん。喫茶店を仕事場に7年をかけて逍遥に次ぐ完訳を果たした後「もうないのか。もっと書いておいてくれればよかったのに」と思ったそうだ。多くの登場人物の中で自分に似たハムレットが一番好きな男性とも語っていた。
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