「国破れて山河あり」というけれど…
毎日新聞2026/6/23 東京朝刊有料記事622文字
講演する川平朝清氏(奥左)と息子のジョン・カビラ氏(同右)=東京都千代田区で2025年10月4日、鈴木玲子撮影
沖縄戦について考える平和学習で中学生に説明する県立首里高の生徒(中央)=沖縄県南風原町の町立南風原中で2026年6月9日午前9時42分、平川昌範撮影
「国破れて山河あり」というけれど……山河も残らなかったわね――。終戦の翌年、引き揚げ船で台湾から故郷の沖縄に戻った母の言葉という。米軍の艦砲射撃で山肌もえぐられていた▲日本統治時代の台湾に生まれ、戦後の沖縄で放送事業に従事した川平朝清(かびら・ちょうせい)さん。7年前の沖縄慰霊の日に放送されたFMラジオ番組で沖縄生まれの長男、ジョン・カビラさんのインタビューに答えた▲元々は琉球王家に連なり、通訳や歌舞音曲に携わった川平家。インタビューや個人史を含めた2人の新著「沖縄を語りつぐ ある家族の歴史」(岩波新書)は沖縄をめぐる日本の近現代史と重なる▲今日は81回目の慰霊の日。19歳で沖縄の土を踏んだ朝清さんは多くの犠牲者を出したひめゆり学徒隊と同世代で98歳。アナウンサー時代に沖縄戦の記録「鉄の暴風」をラジオ放送で朗読したこともある▲放送を学びに米国に留学し、国際結婚。沖縄に戻った後にカビラさんら3兄弟が生まれた。カビラさんの記憶に刻まれているのが少年時代、米軍兵士の交通事故をきっかけに反米感情が爆発したコザ暴動という▲辺野古沖で小型船が転覆し高校生らが死亡した事故で平和教育の萎縮を心配する声がある。「政治的中立性」を理由に論争を避けては教育になるまい。「日本では政治について話すことが、タブーのように感じられる場面が多くあるのは不思議だ。もっともっと話をしたらいいのに」。議論好きな川平家の血を引いたZ世代の孫も執筆に加わっている。
