感震ブレーカー=高尾具成
毎日新聞2026/6/22 東京夕刊有料記事912文字
首都直下地震について、今後10年間の対策をまとめた基本計画の改定で、政府は「感震ブレーカー」設置の重要性を示した。人的被害の約7割は火災が原因になると試算しており、大きな被害が想定される地域で、普及率を100%に近づけ、被害を半数以下に減らすことを目指す。
感震ブレーカーは、地震発生時に設定値を超す揺れを感知すると、ブレーカーやコンセントなどの電気を自動的に遮断する器具だ。電気を原因とした火災(電気火災)の発生を抑制する。
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地震による火災は、生活様式や使うエネルギー・燃料の変化に伴い、推移してきた。関東大震災(1923年)ではかまどや七輪からの出火が中心で、新潟地震(64年)以後はガスや石油を使う機器からの出火が多かったという。昨今はオール電化の住宅も増え、電気火災への対策が重要となった。
電気火災の一つに「通電火災」がある。地震による停電後、電力の復旧時に倒れた電気器具や損傷した配線などから出火する。避難後に無人となった住宅で起こる可能性があり、初期消火が遅れ、延焼拡大につながるおそれがある。
阪神大震災(95年)後の被災現場で「揺れから、しばらく時間をおいて火が出た」「耐火造りなのに燃えた」などの話を度々聞いた。当時、電気火災の危険性はまだ十分に認識されていなかった。
消防庁などによると、阪神大震災で出火原因が判明した火災のうち、85件(約61%)が電気火災で、東日本大震災(2011年)でも58件(約54%)は電気に起因していた。また、能登半島地震(24年)で発生した石川県輪島市の大規模火災でも屋内の電気配線などに溶けた痕跡が確認され、電気火災の可能性が指摘された。
感震ブレーカー設置の重要性は、首都直下地震の対策に限ったものではない。南海トラフ巨大地震対策の被害想定でも、大きな被害が予想される地域で、設置率が100%になれば、火災による焼失棟数は半減できると、国の作業部会が試算している。
空き家への設置も課題だろう。いったん火災が起これば隣家や周辺へも被害を及ぼすことがある。災害弱者が暮らす世帯への設置に向けたサポートも必要だ。災害はいつ起きるかわからない。対策が急がれる。(専門記者)
