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每日메디컬

"건망증"일지라도 기억하고 있다 ∼ 해마를 잃은 남성이 가르쳐준 기억의 구조.

작성자청소부|작성시간26.06.12|조회수3 목록 댓글 0

“健忘症”でも覚えている~海馬を失った男性が教えてくれた記憶の仕組み

2026/06/12無料会員記事

 

=ゲッティ

佐藤眞一

 

 

 

目次

 人間が情報を記憶するとき、脳の中の海馬という部分が主要な役割を担っています。今回はその海馬にまつわる新しい話題とともに、かつて米国での研究に貢献した男性の症例から考えさせられたことを書き留めておきたいと思います。

短期記憶を担う海馬の障害 「原因」はドーパミン不足か

 今年4月24日のプレスリリースによれば、東北大学などの研究チームによる実験で、短期記憶をつかさどる海馬に記憶情報を届ける神経伝達物質ドーパミンの不足が、アルツハイマー病の記憶障害を起こす原因である可能性がわかりました。マウスの実験ではありますが、この発見は、海馬の記憶障害の因果関係を示したという意味で重要です。

 従来は、アルツハイマー病の「結果」として生じるアセチルコリンという神経伝達物質の代謝不全が海馬における記憶障害を引き起こすことがわかり、シナプス(神経細胞のつなぎ目)におけるアセチルコリンの活動を助ける薬剤が開発されました。その代表がアリセプトです。しかし、今回の研究は、海馬に接する嗅内皮質という部位におけるドーパミンの不足が海馬の記憶障害の「原因」であることを証明したことが画期的です。しかも、ドーパミンの不足が原因で起きるパーキンソン病の治療薬として広く使用されている「レボドパ」という薬剤が有効であることが示唆された点も、治療という観点から重要な知見を与えてくれます。

=ゲッティ

 人間に応用する場合は、アルツハイマー病のより複雑な記憶現象を解明しなければなりませんが、この研究発表のリリースを読んで改めて海馬の働きに思いを寄せた私は、その研究の進展に大きく寄与した「症例H・M」氏のことを思わずにはいられませんでした。

けいれん発作を抑える手術で側頭葉を切除された「症例H・M」氏

 認知症では短期記憶、さらに最近経験したことを覚えるというエピソード記憶に大きな障害のあることが明らかになっています。

 2008年12月はじめに米国の新聞に掲載されたある記事に多くの認知科学者や脳神経学者が注目しました。米コネティカット州の老人ホームで82歳の男性が死亡したというニュースです。この男性の名は、ヘンリー・モレゾン。認知科学や脳神経学の分野では、「症例H・M」といえば教科書にも掲載されるほど有名ですから、本文をお読みの方の中にもよくご存じの方がおいででしょう。ご存命中はプライバシー保護のため、論文や書籍ではこう呼ばれてきました。

 モレゾンさんは、9歳の時の事故で頭を強打し、それが原因でけいれん発作を起こすようになりました。そのため、1953年、27歳の時に海馬を含む側頭葉の一部を切除する手術を受けました。それによって海馬の機能はほぼ完全に失われたといわれています。

=ゲッティ

 手術をした医師スコビルと心理学者ミルナーによって、57年に「症例H・M」の手術の経過とその後の不思議な状態が発表されました。けいれん発作はかなりの改善をみせたため、手術の目的は達成されたのですが、「出来事についての記憶の完全な喪失が生じてしまった」と、彼らは報告したのです。

記憶にはいろいろなタイプがある

 その後、術後のモレゾンさんが研究に協力してわかったことを紹介する前に、記憶というものが、その情報処理のプロセスや記憶される情報の内容によって、何種類かに分類されることを押さえておきたいと思います。

 例えば、情報処理のプロセスは「多重貯蔵庫モデル」という考え方が代表的です。最初に目や耳から入った情報を短期間貯蔵する「感覚貯蔵庫」、注意を向けられた情報だけが送られ短期記憶となる「短期貯蔵庫」、繰り返し思い出し整理された情報が送られ長期記憶となる「長期貯蔵庫」に分かれます。

 記憶の内容では「潜在記憶」と「顕在記憶」という分類があります=図。潜在記憶は歩く・泳ぐ・はさみを使う・自転車に乗る――など体で覚えている記憶。顕在記憶は言語化しやすく「いつ誰とどこに出かけた」など個人の体験を含む「エピソード記憶」、著名人の名前など知識としての「意味記憶」があります。

 認知症の場合、短期記憶や最近経験したことを覚えるというエピソード記憶に大きな障害のあることが明らかになっています。

短期記憶が海馬に送られ、長期記憶化してエピソード記憶となるが、認知症になるとそれができなくなる。「プライミング」とは先に受けた刺激(情報)によって意図せず思い出す記憶言語も知能検査も正常…………失われてわかった海馬のはたらき

 モレゾンさんは、手術で側頭葉の一部を切除する手術を受けたことで、手術前のことは覚えているのに、手術後に体験したことは全く覚えることができなくなりました。前向性健忘という症状です。

 他にも、側頭葉内側部の特に海馬の機能が、さまざまな検査から明らかになりました。術後のモレゾンさんは強度の健忘症にもかかわらず、言語的にはほぼ正常であることに加えて、知能検査もほぼ正常にこなしました。知能検査には、短期記憶を必要とする問題も含まれていました。つまり、海馬は、短期記憶の一種で一時的に記憶を保持して簡単な作業をする作動記憶(ワーキングメモリー)とは関係のない部位であり、短期記憶を何らかの形で記銘(符号化)して長期記憶に送り出す働きをする部位であることがわかったのです。作動記憶を保持する場所は、その後、前頭葉にあることがわかりました。

 また、心理学者ミルナーによる鏡映描写の実験も重要な発見に導きました。鏡映描写というのは、二重に線で描かれた星形と星形の間をはみ出さないように注意しながらペンでなぞるという課題です。ただし、実際の星形は見ないで、鏡に映った像だけを見て描きます。モレゾンさんもこの学習を繰り返すと、鏡映描写の能力が向上しました。さらにプライミングと呼ばれる潜在記憶(意図することなく思い出す記憶)の活性化にも問題のないことがわかりました。これらのことから、技能学習(手続き記憶)やプライミングは、海馬が関わる意味記憶やエピソード記憶などの顕在記憶(意図的に思い出す記憶)とは異なる神経構造に関連していることがわかったのです。

 さらに、「手術前のことは覚えている」という状態を詳細に調べたところ、幼少期の記憶は確かに非常に良く覚えていたのですが、手術前数年間の近時記憶を思い出すことがとても困難でした。このことは、海馬を含む側頭葉内側部は、最近の記憶と関連があるものの、古い記憶には影響しないということを示すものです。

=ゲッティ

 空間記憶に関しては、ある種の記憶成績が非常に悪いこともわかりました。つまり、空間記憶が海馬と何らかの関連のあることが示唆されます。

 以上のように、「症例H・M」は、海馬損傷が顕著な認知症の人の記憶障害の症状をよく説明してくれます。

 近年、脳科学が隆盛を極めています。しかし、磁気共鳴画像化装置(MRI)などの画像診断技術が高まったとはいえ、脳の認知機能の詳細な研究は、その部位を意図的に破壊しなければできないため、人間では実験ができません。モレゾンさんのような症例は極めて特殊なのです。

 海馬についての研究では、ラットと呼ばれる実験用ネズミの脳の破壊実験が行われています。海馬のどの細胞を破壊すると、どのような異常が表れるかという実験です。ラットの海馬を広範囲に破壊すると、迷路学習ができなくなります。つまり海馬が、新たな学習行動を長期記憶に移行するという機能に関連していることが、この実験から明らかになります。

 一部の機能が低下しても支えがあれば暮らしていける

 脳細胞は、身体細胞と異なり、細胞分裂をしないために、一度傷がついてしまうと再生しないことが特徴です。そのため、脳細胞に損傷を負ってしまうと、リハビリで細胞を活性化することによってある程度の機能回復を期待することはできますが、元通りの完全な回復は望めません。

 ところが、脳細胞の中にも新生して神経ネットワークが作られて、機能が発揮できる部位のあることがわかりました(島田・近藤、2019)。

 今のところわかっているのは脳内の2カ所だけで、一つは脳室周辺部のそれほど重要とは考えられていない部位のようですが、もう一つは海馬に接する歯状回という部位であることが明らかになっています。歯状回は、嗅内皮質から海馬に入る情報の受け手としての役割を果たしています。そして、身体活動を伴う新たな学習が神経新生を促進するということもわかりました。

 子どもの頃に、自転車に乗る練習を繰り返した人はたくさんいると思います。自転車に乗れるように練習することが、まさにこの学習に当てはまります。中高年期であれば、ダンスや楽器演奏を趣味で始めることなどが思い浮かびます。

認知症基本法成立後の記者会見で話す一般社団法人「日本認知症本人ワーキンググループ」代表理事(当時)、藤田和子さん。「誰もが暮らしやすい環境作りが進むように」と訴えた=東京都で2023年6月14日、宇多川はるか撮影

 重要なのは、それが上達するまで続けることです。神経細胞が新生しても、細胞間の神経ネットワークができなければ、細胞はすぐに死んでしまいます。そして、神経ネットワークが大きくなると、情報の伝達が始まります。海馬で神経ネットワークができて情報伝達が可能になれば、短期記憶が良くなる可能性が考えられます。この研究もまだ緒に就いたばかりのところですが、この研究を知って、私はかすかな希望の光を感じました。

 アルツハイマー病などの多くの認知症では、海馬損傷に伴って記憶が低下します。しかし、今回紹介した数々の研究からもわかるように、人間の認知機能はそれぞれの部位がさまざまな役割を担う組み合わせから成っており、一部の機能が低下しても、適切な支えがあれば、その人らしい生活はかなり長く保たれることがわかってきました。認知症になると何もできなくなってしまうというイメージもまだ残っていますが、「認知症基本法(略称)」(24年1月施行)に基づき政府が立てた基本計画では、認知症になっても自立的な生活が可能であるとして、「新しい認知症観」へと認識を改めるよう呼びかけています。

 ここにご紹介したものを含むさまざまな研究の積み重ねが、いずれアルツハイマー病の予防や治療に結び付くことを願ってやみません。

島田昌一・近藤誠(2019)「運動は記憶力や学習能力に影響を与える」
「ほんとうのトコロ、認知症ってなに?」(山川みやえ・土岐博・佐藤眞一・編、pp.81-95、大阪大学出版会)所収
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佐藤眞一

大阪大名誉教授、大阪府社会福祉事業団特別顧問

さとう・しんいち 1956年生まれ。早稲田大大学院文学研究科博士後期課程満期退学。医学博士。東京都老人総合研究所研究員、マックスプランク人口学研究所上級客員研究員、明治学院大教授、大阪大大学院教授などを経て現職。

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