重要な決断は朝に! 夕方は? 脳の老化を遅らせる「ブレーンフード」と時間活用術
2026/06/14無料会員記事
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目次
心臓や腎臓、肺など重要な臓器の生理機能のピークは30代。60代になると、機能はピーク時の80~60%にまで低下してしまいます。脳も20~40歳で重量のピークを迎え、60代以降は萎縮スピードが加速して、判断力や記憶力が低下していきます。年を重ねる以上、脳の老化を止めるのは難しいことですが、時間栄養学を踏まえて生活習慣を改めれば決して不可能ではありません。時間帯に応じた脳の使い方や脳を鍛える「ブレーンフード」を紹介します。
脳の老化には3種類ある
年齢とともに変わる脳。ただ「変化」といっても一つではなく、次のようにさまざまな側面があります。
①記憶力の変化
記憶力が低下する要因は脳細胞の萎縮だけではありません。睡眠不足やストレス、生活習慣なども関与しています。
記憶には2種類あり、一つが結晶性記憶。長年の経験や教育、学習を通じて蓄積される知識やスキルのことで、60歳を超えても向上し、維持されます。
もう一つが流動性記憶。新しい環境や情報に適応して、迅速に処理・問題解決するスキルのことで、具体的には計算力や暗記力、思考力や集中力を指します。20歳ごろにピークを迎え、その後加齢とともに緩やかに低下する特徴があります。
簡単なチェック方法として、結晶性記憶の場合は常識テスト(例:都道府県を1分で五つ挙げる)がお勧めです。時間がかかるようなら記憶力が低下していることになりますが、経験や知識を繰り返し思い出すことで改善が可能です。
一方、流動性記憶は、逆唱テスト(例:小さな声で「2・1・8」などと読み上げ、数秒あけてから逆順に「8・1・2」と言う)などで確認することができます。こちらも、脳トレや習慣次第で維持や改善が可能になります。
②注意力・処理速度の変化
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注意力や処理速度は10代後半〜20代前半あたりが最も高いとされています。その後は加齢とともに40〜50代から低下を始め、60代以降になると、そのスピードが加速することが、多くの研究報告で指摘されています。睡眠不足やストレス、生活習慣なども関与していますが、頭をよく使う仕事や趣味が多い人、運動習慣などがある人は低下が緩やかな傾向にあります。
セルフチェックとして、トレイルメーキングテスト(例:ランダムに配置された1から25までの数字を順に線でつないでいく。途中で鉛筆を離さず、25に到着するまでの時間を計る)があります。健常な高齢者を対象とした年代別調査では20~49歳が21〜26秒、50~64歳が25〜35秒、65~74歳が32〜44秒、75~89歳が51秒でした。対象や調査によって異なりますが、目安として参考にしても良いでしょう。
③感情と性格の変化
人間の感情は40〜60代あたりで変化すると言われています。特に退職したり、子どもが独立したりして社会的な役割を失うと、孤独感や喪失感から意欲が減退したり、感情のコントロールが難しくなったりします。怒りっぽくなる、無気力になる、過去の習慣や考え方に固執して性格が頑固になる、保守的になる――などが特徴的。家族や友人と意見が合わなくなってきたという方は、周囲の人に自分が変わったかどうかを尋ねてみるのも良いでしょう。
ただ最近の研究によると、現代の高齢者は1990年代の同年齢層に比べて神経症になる傾向が低く、むしろ計画性や自己統制、責任感、勤勉さが向上しているという、うれしい報告もあります。
脳のゴールデンタイムにすべきこと
このように加齢とともに衰えがちな脳機能を整えるには、生活リズムが大切になります。
午前中は脳のゴールデンタイムで、起床後2〜3時間は脳が最もさえ渡る時間帯。寝ている間に記憶が整理されるので、起床後は脳内がリセットされ、やる気を起こすドーパミンやアドレナリンといったホルモンの分泌が盛んになり、認知機能や注意力が高まるのです。よって重要な決断や創造的な仕事、また勉強や複雑な計算などは、この時間帯に行うのがお勧め。朝食には、脳のエネルギー源となるブドウ糖を補給すると、脳の活動がよりスムーズになります。
そして起床6〜8時間後(大抵は午後1時〜3時ごろ)になると、多くの人が眠気や集中力の低下を感じます。昼食に大盛りのご飯や、ラーメン+チャーハンなど炭水化物が多いものを取ると血糖値が乱高下し、より眠気を感じやすくなるので注意が必要です。メールの返信や整理整頓など単純作業をするのに適していますが、15〜20分程度の昼寝(パワーナップ)を取り入れると、脳がさえて活動的になります。
その後、午後4〜6時ごろには第2のゴールデンタイムが訪れます。1日の中で深部体温(脳や心臓などの体温)が最も高くなり、神経の反応も活発になるのです。再び集中力が高まって、ひらめきが増えるので、新しいアイデアを練るのに適しています。
慢性的な睡眠不足で脳は3.5歳老化
一方、就寝に向けては脳をリラックスモードに切り替える必要があります。夕方から睡眠を促すホルモンのメラトニンが分泌され始め、脳は1日の情報を記憶として定着させる準備をしていきます。
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ただ、夕食に脂っこいものなど胃腸に負担がかかるものを食べてしまうと、睡眠中の脳に大きな負担がかかります。胃腸が消化活動を続けている間は脳も休むことができず、働き続けなければならないからです。一般的に消化には約3時間かかるため、寝る3時間前には夕食を終えること。遅くなる場合はおかゆ、うどん、豆腐など消化の良いものを選ぶと良いですね。
寝る前の脳は記憶力が高まるので、暗記する時間に向いています。仕事のマニュアルを読むなどするのがお勧めです。もちろん根を詰めすぎると脳が覚醒し、眠りの妨げになりますから、さっと目を通す程度にとどめてください。特にスマホから発するブルーライトは睡眠の質を低下させてしまいます。米国では慢性的な不眠症が認知症のリスクを40%高め、脳を3.5歳分老化させているという研究報告もあるほどです。
脳を鍛える「ブレーンフード」とは
脳を鍛えるためには、もちろん食習慣も無視できません。まずは朝食をしっかり取ること。昼食や間食では脳疲労を軽くし、夕食では睡眠の質を高めることを意識してください。脳の活性化や認知機能の維持、集中力アップなどに良い影響を与えるとされる食べ物が「ブレーンフード」と呼ばれるもの。具体的には次の通りです。
〇DHA・EPAが豊富な食品=サバ、イワシ、サンマなどの青魚、マグロなど
ドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)は脳の神経細胞を柔軟にし、記憶力や学習能力を高める働きがあります。朝に食べると夜よりも吸収率が高まります。サバ缶茶漬けやツナサンドなどを朝食に取り入れると良いでしょう。
〇コリンが豊富な食品=卵黄、鶏・豚・牛のレバー、大豆製品(納豆・豆腐)など
コリンは脳の活性化や脂質代謝に不可欠な栄養素で、コリンの摂取量が多い人ほど認知機能低下リスクが低いことや記憶力に優れていることが分かっています。
コリンも朝に補給しておくことで記憶力や集中力の維持に役立ちます。朝食に卵や納豆をプラスする、豆乳を飲むなどするのがお勧めです。
〇抗酸化成分が豊富な食品=ベリー類、緑黄色野菜、ナッツ類、サケ、高カカオチョコレートなど
ブルーベリーには抗酸化成分が=大阪府熊取町で2025年7月10日午前9時34分、中村宰和撮影
抗酸化成分は脳細胞の酸化ストレスを軽くするだけでなく、脳の血流を促して脳細胞のダメージを抑え、脳機能の低下を防いでくれます。ただし抗酸化成分の多くは、摂取後2〜3時間程度で代謝・排せつされ、働きが長時間持続しない特徴があるので、こまめに取ることが大切。特に睡眠中は細胞修復が行われるため、夕食にも忘れずに取り入れるのが良いでしょう。
例えば朝は野菜スープやフルーツ、昼は野菜飲料やサケのおにぎり、間食にナッツや高カカオチョコレートを取って、夜は焼きサケや温野菜サラダなどをプラスすることです。中でも野菜や魚、果物、オリーブオイルなど抗酸化食品を取り入れる地中海食は、脳老化を遅らせるという報告もあります。
朝にお勧めの野菜スープ=東京都世田谷区の昭和女子大で2011年12月10日、小出洋平撮影
〇GABAが豊富な食品=発芽玄米、ぬか漬け、トマト、ナス、納豆など
GABAは脳内で働く抑制性の神経伝達物質で、興奮を静めて神経のバランスを取る役割があります。継続的に摂取することで心理的な不安やストレスの軽減、睡眠の質の改善などに寄与し、記憶や認知の改善効果が期待できます。
納豆はコリンが豊富=2001年
GABAは摂取後約30分〜60分で血中濃度がピークに達するため、日中の集中力や思考力をサポートしたい場合は朝や昼に、夜の就寝をサポートしたい場合は夜に取り入れるのが良いでしょう。最近はGABAの満腹感増強作用が発見され、食べ過ぎ防止にも期待が持てるようになりました。
GABAを含む食品には野菜やお菓子、ゼリー飲料などさまざまあり、健康の維持・増進に役立つ「機能性表示食品」であることも少なくありません。「ストレス緩和・疲労感軽減」「睡眠の質の向上」「血圧対策」「肌の健康維持」などをうたっている商品もあるので、必要に応じて摂取してみてはどうでしょう。
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以上のように、脳機能をサポートする成分を効率よく取り入れることは、脳の健康につながります。しかし過剰な糖分や脂肪分、アルコールは脳細胞にダメージを与えるので、取りすぎには注意したいものです。実際、2022年に米医学誌に掲載されたブラジルの研究グループによる大規模追跡調査では、スナック菓子や加工肉といった超加工食品の摂取量が多い人ほど糖分や塩分、脂肪分が増え、脳を老化させてしまうことが明らかになりました。
時間帯によって脳のコンディションは大きく変わります。それだけに上記のリズムに合わせて活動すると、脳機能を最大限に引き出すことができるのです。午前中に集中して作業し、午後は運動、夜はしっかり寝るというシンプルなリズムが脳の健康に役立つことを覚えておいてください。
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望月理恵子
管理栄養士
もちづき・りえこ 調剤薬局、健康食品会社を経て株式会社Luce代表。健康検定協会理事長。山野美容芸術短大講師、小田原短大講師、日本臨床栄養協会評議員、小田原銀座クリニック栄養顧問を兼務。著書に「やせる時間に食べてみた!」ほか多数